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「題名のない子守唄」をお勧めします。

トルナトーレ監督、今回は極上のサスペンスでした。

画像:UNKNOWNWOMANL.jpg説明
「ニュー・シネマ・パラダイス」で世界中の映画ファンを魅了した、ジュゼッペ・トルナトーレ監督。「マレーナ」以来6年ぶりとなるトルナトーレ監督の最新作は、従来の甘美でノスタルジックな作風とは趣を変えて、人知れぬ重い過去を背負った1人の女性が仇敵に復讐を遂げていく様子を鮮烈なタッチで綴った衝撃作品でした。
女の悲哀を全身に滲ませながらヒロインを熱演するのは、ロシア出身の演技派クセニア・ラパポルト。エンニオ・モリコーネの重厚な音楽は今回も聴き逃せません。


 長距離バスに乗って、北イタリアの港町トリエステへとやってきたイレーナ(クセニア・ラパポルト)。偶然を装って、高級住宅地に住む裕福な貴金属商、アダケル家(クラウディア・ジェリーニ)のメイドの職を巧みに手に入れたイレーナは、完璧な仕事ぶりで瞬く間にアダケル夫人の信頼を勝ち得、さらには夫妻の4才のひとり娘で気難しい性格のテア(クララ・ドッセーナ)とも次第に心通じ合うようになる。しかし、実はイレーナには人知れぬ重い過去の秘密があり、その復讐のために一家に近づいたのだった…。


名作『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督が、従来のノスタルジックな作風とは趣を変えて放った衝撃の作品でした。
ある決意を秘めて裕福な家庭のメイドとなった、女性の顛末をミステリアスに描いています、エンニオ・モリコーネの重厚な音楽も相変わらず素晴らしい映画でした。
ウクライナのクセニア・ラパポルト演じるジョルジアと呼ばれる女は北イタリアにやってきます、そこでジョルジアはイレーナという名前で髪を染めて家政婦の仕事を探します。
ある高級アパートで家政婦のジーナや支配人のマッテオと仲良くり、偶然を装ってジーナを階段から落としてしまいジーナの変わりにアダケル宅に家政婦として入り込むことに成功します。やがてイレーナは女主人のクラウディア・ジェリーニ演じるヴァレリアや娘のクララ・ドッセーナ演じるテアと仲良くなり、彼女とアダケル家の距離は縮まっていきますが・・・。
トルナトーレ監督はこの『題名のない子守歌』の主役のイレーナ役には、出産経験のある無名の女優にこだわったそうです、この映画のテーマは“母性”ということで、ロシアの舞台女優のクセニア・ラパポルトに決まったそうです。
いきなり女性が下着姿になって仮面を付けてオーディションを受けるような、そんなシーンから始まるので最初から何時ものトルナトーレ監督の作品とは違うなと思いました、しかし映画が進んでいくうちにトルナトーレ監督らしい優しい作風も顔を覗かせていました。
家政婦として潜り込んだアダケル邸の娘テアが難病にかかっていると分かると母親の顔に戻ったり、イレーナの過去に何かあったであろうことはフラッシュ・バックのシーンなどで分かりますが、ここまでイレーナがアダケル家にのめり込むのはなんなのか・・・。
イレーナは売春をさせられていたらしいことや妊娠してしまったこと、“ジョルジア”という名前も売春の元締めの“黒カビ”に付けられた名前という事も分かります、そして彼氏を○○されたことや暗いイレーナの過去が色々と分かっていきます。
何故か暗くて陰惨なモノが主題の映画なんですが、映画を通してのイレーナの表情やテアのラストの表情がとても穏やかで、トルナトーレ監督が主演のイレーナ役に“母性”を強く求めたのも分かるような気がしました、母親を経験していそうな女弁護士の表情も素敵でした。
エンニオ・モリコーネの音楽も胸に染み込んでいくような哀愁を感じさせてくれました、トルナトーレ監督はやっぱり優しい映画を撮る監督だなぁと思わせてくれました、『題名のない子守歌』という題名も納得の映画でした、お勧めします。