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「ボンボン」をお勧めします。

素敵な映画でした。

画像:bombon.jpg説明
かつてダニエル・デイ=ルイスを主役に迎えてロードムービーの佳作、「エバースマイル、ニュージャージー」(結構面白かったです)を撮り、注目を浴びたアルゼンチンの映画監督カルロス・ソリン。彼が本作ではキャストの大半に演技の素人を起用し、中年のおじさんと犬との心の交流を優しいまなざしで観察。アキ・カウリスマキ監督の作品ともどこか相通じる、ささやかですが心温まる人生讃歌は、各国の映画祭で好評を博しヨーロッパでも大ヒットを記録しました。


20年間まじめに勤めていたガソリンスタンドを突然クビになって以来、娘夫婦の家に厄介になりながら、肩身の狭い毎日を送る中年男のフアン(フアン・ビジェガス)。そんなある日、彼は車がエンコして道端で立ち往生していた女性を人助けしたお礼に、1匹の白い大型犬をもらい受ける。その犬の立派な姿に惚れ込んだある紳士に勧められ、フアンは、トレーナーのワルテル(ワルテル・ドナード)とコンビを組んで犬を本格的に仕込み、ドッグショーに出場させることにするが……。


ガソリンスタンドをクビになって失業した中年男の人生が、一匹の大型犬との出会いを機に少しずつ上向きになっていく様子を、暖かい視線で描いていました。
キャストの大半に素人を起用したそうですが皆素朴でいい演技をしていました、心温まるタッチで綴った人生賛歌にもホンワカとしたいい影響を与えているようでした、ボンボン・デ・レチェン役のグレゴリオ君も可愛くてとても良かったです。
グレゴリオ君は本国のアルゼンチン原産の血統種でマスチフやブルドッグにブルテリアなどを交配されたものだとか、ドゴ・アルヘンティーノと呼ばれる純血種でかつてはジャガーやピューマなどの狩猟犬として活躍したらしいです、でもこのボンボン・デ・レチェンを演じたグレゴリオ君はおっとりとしていて、ちっともそんな感じはしませんでしたね。
全編をアルゼンチンのパタゴニア地方で撮影したそうで、パタゴニア地方の風景の美しさと雄大さは素晴らしいモノがありました。
ビジェガスは道路で故障した車を150キロも離れた農場まで牽引してあげて、そのお礼として亡くなった主の犬を譲り受ける事になります、それがグレゴリオ君演じるボンボンなんですがこれがまた闘犬や狩猟犬らしいんですが、大きいんだけど見事におとなしくてちっとも狩猟犬・闘犬らしくありません。
このレ・チェン(多分ビジェガスがルシアンと間違えているものと思われます)と一緒になってから、ビジェガスには仕事がふいに舞い込んだりドッグショーを紹介されたりと、ビジェガスの萎んでいた人生は段々と明るい光に照らされるようになります。
劇的に・急激にという訳では無くて、敢えてゆっくりと確実に人生を好転させて行くビジェガスとレチェンのコンビが素晴らしかったですね、嘘臭く無くてとても好感が持ててそれが静かな感動を与えてくれているようにも思えました。
いま気付きましたがこの映画、フアン・ビジェガスもフアン・ビジェガスで元ガソリン・スタンド勤務、ワルテル・ドナードもワルテル・ドナードといってアニマル・コーディネーターだとか、カルロス・ソリン監督恐るべしですね。
ガソリンスタンドのスクラッチで当たった『メン・イン・ブラック』風のサングラスを、誇らしげにかけるビジェガスの表現も哀愁が漂っていて良かったです、歌手のスサナとのちょっとしたやり取りも明るい未来を感じさせてくれるモノでした、お勧めします。