 | 「アモーレス・ペロス」「21グラム」の俊英アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が、旧約聖書の「創世記」にあるバベルの塔(天に届く塔を建設しようとして崩れてしまった塔で、実現不可能なものを指すことも)にタイトルを借りた意欲作でした。 1つの悲劇が遠く離れた各地を繋げる壮大さもさることながら、有名無名を問わず出演しているキャストも見応えありました。ブラピにケイト・ブランシェットにガエル・ガルシア・ベルナル、役所広司に菊地凛子やアドリアナ・バラーザ(いずれもアカデミー助演女優賞候補に)らから魅力的な熱演を引き出した演出は凄かったです。前年の「ブロークバック・マウンテン」に続いてアカデミー作曲賞に輝いた、グスターボ・サンタオラヤの音楽も印象に残る作品になりました。何よりも菊地凛子ちゃんが、アカデミー賞の助演女優賞にノミネートされたことが凄く嬉しいですよね。
モロッコの村で山羊飼いの家族が1挺のライフルを手に入れ、幼い兄弟が撃った銃弾は、観光ツアーに参加していた米国人女性スーザン(ケイト・ブランシェット)に当たり、同行していた夫リチャード(ブラッド・ピット)は動揺する。LAのリチャードの家で乳母をしているメキシコ人女性アメリア(アドリアナ・バラーザ)は、帰国できなくなった雇い主夫婦の幼い子供2人の面倒を見るか、メキシコで開かれる息子の結婚式に出席するか、選択に迫られる。同じ頃東京では、聴力障害者の女子高校生チエコ(菊地凛子)が満たされない気分を不良じみた行動でごまかそうとし……。
メキシコの鬼才アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督が贈る、アメリカ・メキシコ・日本・モロッコで織りなす、愛と悲しみと再生の人間ドラマでした。 菊地凛子さんがアカデミー賞の助演女優賞にノミネートされて日本でも話題になりましたよね、他に役所広司さんも出ていて日本人も頑張っていましたね。 原題のバベルとは『旧約聖書』の「創世記第11章」にある町の名前で、『町の人々は天まで届くバベルの塔を建てようとしたが神はそれを快く思わず、人々に別々の言葉を話させるようにした。その結果人々は統制がとれずばらばらになり、全世界に散っていった』という話に基づいています。 この『バベル』ではこれを背景として、「言葉が通じない」「心が通じない」世界における人間同士の物語として、上手に展開されています。 モロッコの羊飼いの一家が銃を買ったところから物語は始まり、何気なく羊飼いの子供の兄弟が観光バスを銃で撃ったことからストーリーは動きだします、幾つもの小さな物語が展開されていてブラピとケイト・ブランシェットにメイドの女性アメリア(アドリアナ・バラーザ)と親族のガエル・ガルシア・ベルナル、役所広司に聴覚障害者役の菊地凛子チャンと目まぐるしく場面・ストーリーが絡み合って交差しています。 かなり複雑なところもあるので分かりにくいという評価もありましたが、僕には物凄く面白かった物語でした、一見凄く複雑に思えるストーリーですが意外なところで不思議な繋がりを見せてくれる映画でした。 菊地凛子チャンがオスカーにノミネートされていましたが、ノミネートされて納得の演技をしていたと思います、聴覚障害の女子高生を演じていましたがとても上手に演じていました。それだけに彼女が体当たりで演技してくれているのですから、大事なシーンでのボカシは逆に性器を強調しているようで、とても失礼に当たるんじゃないかと思いました。 他の日本人たちも頑張っていました、役所広司さんに間宮刑事を演じた二階堂智も良かったし、キレイな日本語も飛び交っていて声も大きくて良かったです。 菊地凛子チャンが聴覚障害というだけでバケもののように扱われて、怒ってパンツを脱いで男子生徒を誘惑するシーンにはビックリしました、でも全く音のない生活というのは想像がつかないですが大変だと思います。 他にもブラピとケイトも素晴らしかったし現地の通訳も良かったです、それぞれのお話しの繋がり方も見事でした、このままラストになったら救いがなくてどうしてくれると思ってましたが、あのラストも良かったです。政治的・社会的に様々な問題に直面する彼らですが、「言葉が通じない」「心が通じない」世の中で政治的・社会的問題なんかよりも生きている彼らが大切だろと、改めて思わせてくれる映画でした。 「何故日本の設定が聾唖だったのか」とか、「菊地凛子の演技はオスカーのノミネートに値しない」とか言われているみたいですが、たまたま日本という比較的先進国が”聾唖”の舞台になったと障害者の僕には思えます。 それに「菊地凛子チャンのノミネート」も、いままで見向きもされなかった日本に注目が集まってきたと思えば、僕は菊地凛子チャンは頑張ったと感じました。聾唖の女優の岡田絵里香チャンも頑張りました。 昨年のオスカーの作品賞にノミネートされた作品は、全て見ましたがどれも素晴らしい出来でした、お勧めします。 |