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2007年の、僕の初見の映画、ベスト10です。

それでは『2007年初見の映画第10位』の発表です。

画像:kingkong05.jpg説明
第10位はナオミ・ワッツとエイドリアン・ブロディ、ジャック・ブラック共演の「キング・コング」です。

この作品は『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソンが監督した作品で、僕の大好きなジャック・ブラックも出演していた映画だったので、凄く楽しみにしていました。

ですが正直言うとちょっと恐い面もありました、ピーター・ジャクソンがジャック・ブラックやナオミ・ワッツ、エイドリアン・ブロディらで1933年のメリアン・C・クーパーのモンスター映画の金字塔『キング・コング』をリメイクするというので、かなり公開前に話題になりました。

しかし公開されてもあまり情報や論評が入ってこなくて心配しました、アカデミー賞でも3部門ほど賞を獲りましたが「視覚効果賞」など全て技術系の受賞やノミネートでしたので、内容はどうだったのかと思っていました。

やっと観る事が出来ましたが映画を観て納得、忠実な1933年のオリジナルのリメイクでしたし特殊撮影や視覚効果は圧倒的なものがありました、僕はこれを見てすぐに3枚組のDVDを買ってしまいました。

無謀な映画監督カール・デナム(ジャック・ブラック)が脚本家のジャック・ドリスコル(エイドリアン・ブロディ)や売れない女優アン・ダロウ(ナオミ・ワッツ)らと謎の島に向かい、突如現れた巨大猿(コング)や謎の生物達に襲われてしまいます。

アンを気に入ったコングは彼女にだけはおとなしく、デナムはコングを連れて帰国し、見世物にしようと企み……というストーリーてした。

皆さんにも是非観ていただきたい映画なのであまり語りたくありませんが、キングコングとアンが島の高台から見た夕日が素晴らしくキレイでした、そしてジャック・ブラック演じるカールがふてぶてしくて泣けてきます!

アンとカール、ドリスコルら3人の出会いは良かったと思いました、違和感なくスムーズだったと思います。特撮やダークな雰囲気も『さすがはピー・ジャク』という感じでした、『ロード・オブ・ザ・リング』の世界観に近いものがありました、ハリ・ポタよりもロードの世界が好きな人には持ってこいです。

そして彼の描くジャングルやその島の秘密がまた凄い!キングコングの本物みたいだし躍動感も素晴らしい、活躍ぶりも凄ければアンを助けるキングコングはカッコイい!

オリジナルに忠実なリメイクだったので、1933年や1976年のものと、見比べてみるのもいいでしょう。

この「キング・コング」が、2007年初見の映画第10位でした。


『2007年初見の映画第第9位』

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『2007年初見の映画第第9位』は、キリアン・マーフィ主演でリーアム・ニーソンやエヴァ・バーシッスル共演の、「プルートで朝食を」です。

まず物語のはじめをルベッツの『Sugar baby love』でスタートさせたところに、天才・ニール・ジョーダン監督のセンスと、この「プルートで朝食を」の成功を予感させてくれました。

とにかく主人公のパトリック・“キトゥン”・ブレイデンを演じた『 28日後... 』のキリアン・マーフィが上手いです、「28日後... 」や「真珠の耳飾りの少女」に「麦の穂をゆらす風 」なども好きでしたが、この「プルートで朝食を」のキトゥン役が一番似合っていて上手かったと思います。

ヒーローからクセのある悪役まで、キリアン・マーフィって何でも上手いですがこの”女装のゲイ”の“キトゥン”役というのは、彼の最高傑作ではないかと思います。

1970年代のアイルランド独立運動最中の小さな町で、神父リーアム(リーアム・ニーソン)と若い家政婦アイリー・バーギン(エヴァ・バーシッスル)の間に生まれた、パトリック・“キトゥン”・ブレイデン(キリアン・マーフィ)。

自らを“キトゥン”と名づけ夢想家で女装癖のある青年に成長した彼は、自分を色眼鏡で眺める居心地の悪い生まれ故郷の町を飛び出すと、行方知れずの母親を捜すべく旅に出るのだが…というストーリーです。

神父で“キトゥン”の父親のリーアム神父をリーアム・ニーソンが、“キトゥン”の母親で今はロンドンで新しい生活をしているアイリー・バーギンをエヴァ・バーシッスルが好演しています、エヴァ・バーシッスルは「やさしくキスをして」でも主演のロシーンを熱演していました。

スティーヴン・レイなどの”アイリッシュ系”俳優が沢山頑張っている映画でしたが、映画のいたるところにアイルランドの独立闘争やいぎりすの武力に寄る弾圧、IRAのテロなどの暴動・暴力が振り撒かれています。

ところが“キトゥン”は華やかで軽やかにその戦争の間を颯爽とすり抜けて行き、戦争やテロのように暴力を解決の手段として肯定しているマッチョ志向の現代社会へ、平和主義者のゲイから見た批判とも言えるこの「プルートで朝食を」は思っていたよりも素晴らしい作品でした、そういった視点から見れば素晴らしい反戦映画なのかもしれません。

キリスト教は“キトゥン”のようなゲイを認めてはいませんが、リーアム神父の姿はお父さんと神父さんの、一つの理想像でありあるべき姿だと僕は思います。

ラストでルベッツの『Sugar baby love』が流れる中、キトゥンのパトリックへのセリフと、アイリー・バーギン達親子とキトゥン・チャーリー達の進む道が正反対へと進んでいくラスト・カットが秀逸でした、是非皆さんもご覧になってください。

この「プルートで朝食を」が、2007年初見の映画第9位でした。


『2007年初見の映画第第8位』

画像:mariea6.jpg説明
『2007年初見の映画第第8位』は、キルスティン・ダンスト主演でジェイソン・シュワルツマンやアーシア・アルジェント共演の「マリー・アントワネット」です。

「ロスト・イン・トランスレーション」はいい映画でしたが、日本好きの日本通のソフィア・コッポラにしては"日本"の描き方が良くなかったので、『どーしたソフィア・コッポラ』と思っていました。

ところがこの「マリー・アントワネット」、キルステン・ダンストを「ヴァージン・スーサイズ」に続き主演に持ってきましたが、これがとってもキュートで愛らしい"傲慢女王・マリー・アントワネット"を魅力的に変身させていてストーリーも抜群に面白かったです!!

今まで単なる『ワガママ王妃』で片付けられてきたマリー・アントワネットを、夫に関心を示されなくてその虚しさを紛らわすかのように浪費を楽しむ孤独な”青春”を送った一人の女性として、ソフィア・コッポラ独自の視点で繊細に映し出していました。

僕はこの映画を見るまではワガママな女王で浪費癖があって、貧しい国民に『パンが無ければ、ケーキ(お菓子)を食べればいいじゃない』といって庶民の怒りを買い、夫のルイ16世とともにギロチンにかけられた王妃だとしか思っていませんでした。

しかしこの映画を観て本当にマリーはあんな事を言ったのだろうか、あんなに本当は人間らしい面もあったのだろうかと、色々マリー・アントワネットのことが気になって調べてしまいました。

僕の中では『エリザベス・タウン』でキルスティン・ダンストの可愛らしさは復活していましたが、この作品も彼女の魅力に溢れた作品でした、キルスティン・ダンストがマリー・アントワネットを演じていなければこの映画の成功は無かったんじゃないかなと思っています。

アーシア・アルジェントやジュディ・デーヴィスもとてもマッチしていて良かったんですが、登場時間が期待よりもずっと短くてちょっとガッカリでしたが、キルスティン・ダンスト『マリー・アントワネット』を眺めているだけで十分に楽しかったです。

このキルスティン・ダンストのキュートな「マリー・アントワネット」をご覧になったら、あなたも僕のように彼女の虜になるでしょう、ソフィア・コッポラがプレゼントしてくれた可愛いチョコレート=麻薬かもしれません。

この「マリー・アントワネット」が、2007年初見の映画第8位でした。


『2007年初見の映画第第7位』

画像:mamiyakyo01.jpg説明
『2007年初見の映画第第7位』は、佐々木蔵之介さんにドランクドラゴンの塚地武雅が主演の「間宮兄弟」です。

この映画は仲の良い兄・明信(佐々木蔵之介)と弟・徹信(塚地武雅)の『間宮兄弟』の、日常を少しスパイスを加えながら面白く綴った映画でした、シュールな笑いを交えながらも殆どそれに頼らないつくりになっていましたね。

「こんな面白い映画、誰が撮ったんだろう」と思ったら、「 そろばんずく 」の森田芳光監督でしたね、「黒い家」的な感じも面白いと思いましたがこういう笑える映画を撮らせたら上手いですよね。

兄・明信と弟・徹信の二人の兄弟がただ一緒に仲良く暮らしているだけなのですが、やたらとおかしいんですよね、とりわけドラマチックであったりシュールな笑いで攻めるという事も無いのですが・・・・。

沢尻エリカちゃんに常盤貴子という演技もお顔もイケテる脇役陣に加えて、ロールスを乗り回す明るい母親の中島みゆきさんにアホな男で明信の友達のの高嶋政宏も良かったです、北川景子ちゃんも沢尻エリカちゃんの妹役でしたが面白かったです。

しかし何といっても『間宮兄弟』を演じた、佐々木蔵之介さんと塚チャンの熱演ではなく好演につきますね、ホントにビックリするくらい良かったです。

普通30代で未婚の"仲よし兄弟"っていったら、どこか気持ち悪いモノを想像しがちですが、ホントに仲の良い自立した大人の兄弟を好演していました。

仕事や恋の悩みを”夜の反省会”で話したり、色んなパーティを開いてモノポリーや人生ゲームを楽しんだり、上田もま真っ青の雑学汪であったり・・・・・。

この兄弟は互いを尊重して、母親を愛するゴク普通の仲の良い兄弟です、だからこんなに面白く思えてしまうんでしょうね、変に(ズルい手を使って)機をてらうような姑息なマネをしなかったのがいい方に出たのでしょう。

ドランクドラゴンの相方の鈴木の使い方も、「さすが森田監督」といったモノでした、細かいところにまで気持ちが入っている映画でした、エンド・ロールや終ってからも楽しませてくれる映画でした。

この"さほどドラマチックな事の無い"のにこんなに面白い映画を、皆さんにも是非堪能していただきたいです、とにかく普通なんですが笑えます。

この「間宮兄弟」が、2007年初見の映画第7位でした。


『2007年初見の映画第第6位』

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『2007年初見の映画第第6位』は、シャーリーズ・セロン主演でウディ・ハレルソンに”悪人顔大魔王”ショーン・ビーン共演の「スタンド・アップ」です。

これは2007年になって比較的すぐ観た映画でしたが、思っていたよりもずっと素晴らしくて楽しい映画でした、こういった”訴訟問題”を前面に押し出した作品の中では出色の出来栄えだと思いました。

少し「エリン・ブロコビッチ」に似た感じを受けました、あちらは一切法廷シーンのない訴訟映画ですが、こちらは訴訟シーンがありましたがテンポや映画全体から受ける印象が似ている気がしました。

シャーリーズ・セロン とフランシス・マクドーマンドが、主要な映画祭の演技賞にノミネートされただけで、作品はあまり面白みの無い映画になってしまったんではないかなぁと少し心配していました。

しかし観てみたら面白い訴訟映画になっていましたね、彼女は以前インタビュー番組でもその”美しすぎる顔”が邪魔になっていると言っていました、あれだけ美しい顔だからしょうがないかなとも思いましたがこの映画も一種の彼女なりの”反撃”なのかなと考えていました。

ところがこの「スタンドアップ」の彼女を見てその考えはあさはかだったと思いました、やっぱりシャーリーズ・セロンの演技は素晴らしかったし上手かったです、『モンスター』での演技に勝るとも劣らないものでした。やっぱりその美しさと気高さは変わりませんでしたが、素晴らしかったと思いました。

暴力夫と別れて鉱山労働者として働くシングルマザーのジョージー・エイムズ(シャーリーズ・セロン)は、男社会である炭鉱の仕事に女が働くのを面白く思わない同僚のほとんどを占める男性たちからの露骨で悪質な嫌がらせの数々に悩まされて、遂にふとしたきっかけで知り合ったホッケー上がりの弁護士ビル・ホワイト(ウディ・ハレルソン)と一緒に男性社会の中で立ち上がっていきます。

しかし反撃を恐れ仲間の女性達は彼女の意見になかなか賛同しません、しかし粘り強く闘うジョージーの姿に親友や一緒に働く父親と優しく見守る母親、そして今まで怯えて黙っていた仲間達の心がジョージーの魂の叫びに立ち上がろうとして・・・・というお話です。

これは世界で初めてのセクシャルハラスメント訴訟の映画化で、訴訟を起こすまでに10年でセクハラが始まってからは20年の歳月がかかったそうです、『 クジラの島の少女』のニキ・カーロ監督がともすると暗くなりがちな主題を持つドラマに、不思議な力を与えています。

忘れてはいけないのが共演者たちの頑張りです、親友で病気になりながらもジョージーを支えるグローリーのフランシス・マクドーマンドに堅物な父親だけど最後には頼れる父にリチャード・ジェンキンズ、仕事仲間のシェリーを演じたミシェル・モナハンやホッケー上がりの弁護士役のウディ・ハレルソンも久しぶりに良かったです。

ですが一番良かったのはやはり”悪人顔大魔王”のショーン・ビーンでしたね、こんな役柄の彼を見てみたいと思い始めてはや何年、こんなショーン・ビーンを待っていました、この「スタンド・アップ」でのグローリーの旦那役のカイルは彼のキャリアでも「最高・最良」の役柄でしょう。

それからこれは邦題の”スタンドアップ”勝利でしょうね、ジョージーの勇気ある行動に一人一人が”スタンドアップ”していく映画ですから、原題の「North Countory」よりもこの映画の主題が伝わってくるように感じます、”スタンドアップ”は最高の題名だと思いました。

ラストが少しうやむやな感じに思えますが、これは法廷や裁判なんかが伝えたい事ではないからでしょう、一人の勇気ある女性のために皆が”スタンドアップ”していく映画です、是非皆さんもご覧になってください。

この「スタンドアップ」が、2007年初見の映画第6位でした。


『2007年初見の映画第第5位』

画像:kissbig.jpg説明
いよいよ、ベスト5の発表です。

『2007年初見の映画第第5位』は、エヴァ・バーシッスルとアッタ・ヤクブ主演の「やさしくキスをして」です。

これは2007年に観た新作のラブ・ストーリーの中で一番の作品でした、”社会派”として知られる名匠ケン・ローチ監督が初めて本格的に取り組んだ恋愛映画でした、ケン・ローチ監督の素晴らしいラブ・ロマンスにも驚きましたがラブ・シーンの素晴らしい映画でもありました。

コットランドのグラスゴーで出会い恋に落ちた、イスラム系移民2世の男性カシム(アッタ・ヤクブ)とアイルランド人の女性教師ロシーン(エヴァ・バーシッスル)。そんな2人が、各自の文化的・宗教的背景の違いから大きな壁に直面し、苦悩するさまを描いています。

「 SWEET SIXTEEN」「 麦の穂をゆらす風」のイギリスの名匠ケン・ローチ監督が、厳しい社会の現実をしっかり見据えつつも、人間的温もりに満ちた眼差しで切なくリアルに描写しました。

ロシーン役の女性がとても美しくて見覚えのある人だと思ったら、「プルートで朝食を」でミッツィ・ゲイナーに似ている“キトゥン”の母、アイリー・バーギンを演じたエヴァ・バーシッスルでした、本当に綺麗で素敵でした。

恋に落ちた2人カシムとロシーンには、乗り越えなければならない障害が沢山ありました、宗教や人種や色々………。

カシムは突然ロシーンが予約してしまったスペインの旅行先のホテルでで、「僕は9週間後に従姉のジャスミンと結婚しなくてはいけない」と打ち明けます、「その呪縛から逃れられない」とも。当然ロシーンは怒ります、「私は安い花婿用の娼婦か」「呪縛なんかクソくらえ」と。

カシムは「結婚は取り止める、君にはわからないかもしれないが家族がバラバラになるかもしれない」と、家族の結びつきをとても大事にしていてカシムや家族は僕等が思い想像するイスラム教とパキスタンという国の独特なイメージですよね。

このイスラム教とキリスト教の狭間でも二人は苦しみますが、その人種などによっても二人の越えなければならない垣根は、僕達が理解出来る範囲を超えているような気がします。イスラムの男カシムは「いつまで」とロシーンに訊ね、ロシーンは「そんな先の事は分からない」と答えます。

愛し合っていても二人を隔てる壁はあまりに高く、お互いの価値観さえも飲み込んでいきます・・・・・。この二人の未来は果たして・・・・・というストーリーですが、こういう事が本当の”二人を隔てている障害”と呼ぶのだと思いました。

この「やさしくキスをして」が、2007年初見の映画第5位でした。


『2007年初見の映画第第4位』

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『2007年初見の映画第第4位』は、ジョエル・エドガートンとキウェテル・イジョフォーの「キンキーブーツ」です。

この映画は2007年の暮れ近くに観た映画でした、「マリー・アントワネット」の一月くらい前に観た映画でしたが、最後まで3位にするか4位にするか迷った映画でした。

のどかな英国の田舎町ノーサンプトンを舞台に、真面目な靴職人の父親から倒産寸前の靴工場を受け継いだ息子チャーリー・プライス(ジョエル・エドガートン)が、ドラッグ・クイーンのローラ(キウェテル・イジョフォー)の悩みをヒントに、女装趣味の男性に向けたセクシーなブーツ“キンキーブーツ”の生産に打ち込み、それで再起を狙いますが…というお話です。

英国での実話をベースにしたハートフルなコメディでした、これは同じ英国産の『フル・モンティ』みたいって紹介されてましたが、それ以上の作品だと思える作品でした。

チャーリーを演じた一方の主役のジョエル・エドガートンも素晴らしかったですが、とりわけドラッグ・クイーンのローラ(サイモン)を演じたキウェテル・イジョフォーが良かったですね、流石『ラブ・アクチュアリー』一族の一員ですよね。

やっぱり『ラブ・アクチュアリー』って凄い映画だと思います、ヒュー・グラントやリーアム・ニーソンにエマ・トンプソンにコリン・ファースなどの元からスターだった人は別ですが、キーラ・ナイトレイやキウェテル・イジョフォーにマーティン・フリーマンなどは主役を張れるようになりましたし、ローラ・リニーやビル・ナイにエリシャ・カスバートなんかは以前よりも遥かにいい役が回ってくるようになりましたね。

ローラのお店でローラのショーが始まる時のアナウンスで、『紳士・淑女、どちらにするか迷っている皆さま』とあるんですが、これも笑えました。ただおかしいというだけではなく、いいセリフ・心に残るセリフも沢山出て来ました。

ローラがクズ置き場で働いているのを見て、チャーリーが「クズ置き場で仕事しなくても」と言うとローラは、「ここは落ち着くの、クズって意外と味わい深いものよ、はみ出しモノも」と答えます。

ローレンがニックにふられたチャーリーに、『人が何をなし得たかは、ほかの人の心に何を残したかで測るべきよ』と答えます、本当にこの映画は心に残る言葉の宝庫だったと感じました。

一見荒くれモノの工員のドンに『ショーン・オブ・ザ・デッド』のニック・フロストが出てました、かなり重要な役で心配しましたがなんとか上手にこなしていました。

ローレンを演じたサラ=ジェーン・ポッツが良かったです、『アメリカン・スクール・トリップ』でポルノ女優役をやった時も褒めたんですが、ここでも凄く可愛くて落ち着いていて良かったです。

こういう丁寧に創りこまれたイギリスの映画を観ると、『イギリス産の映画ってやっぱりイイナ』と思ってしまいますね、『ラブ・アクチュアリー』もイギリスとアメリカの合作でしたが舞台も殆どイギリスでしたしね・・・・。

いつしか女装趣味に対する偏見を捨て互いに友情を築いてゆく社長チャーリー以下工場の人々と、ローラたちのドラッグクイーンとの交流が楽しいです、皆さんにも見ていただきたい映画です。

この「キンキーブーツ」が、2007年初見の映画第4位でした。


『2007年初見の映画第第3位』

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『2007年初見の映画第第3位』は、小林聡美さん主演で片桐はいりさんともたいまさこさん競演の「かもめ食堂」でした。

いやぁ、この「かもめ食堂」は「シリアナ」の直後に観たせいもあるんだろうけど、物凄く分かりやすくて面白い映画でした、『バーバー吉野』でデビューした新鋭・荻上監督の作品でした。

といっても僕は『バーバー吉野』は観ていないので良く分かりませんが、ただ皆さんの評価は高いみたいですね、荻上監督独特の心地よい空気感は凄いものがありました。

小林聡美・片桐はいり・もたいまさこと、唯一無二の存在感を発揮する女優さんたちが主演と聞くと「やっぱり猫が好き」のようなちょっとシュールな物語を思い浮かべてしまうでしょ、脱力系でシュールな笑いもあるにはありましたがきちんとドラマしていました。

フィンランドのヘルシンキに“かめも食堂”という小さな食堂をオープンした日本人女性サチエ(小林聡美)が、シンプルな“おにぎり”を看板メニューに日本食のおいしさを伝えたようと張り切ります、訳ありなミドリ(片桐はいり) とマサコ(もたいまさこ)の2人の日本人女性の力を借りて、フィンランドで奮闘しますが・・・・・というお話です。

とにかく”なんでフィンランドなの?”とか、”サチエとミドリとマサコの過去は?”とか、はじめの方は気になっているんですけど途中からそんな事はどうでもよくなってきます。

これも「バス男〜ナポレオン★ダイナマイト〜」に似ているようなところもあるんですよね、これといったドラマが無いと言えばありませんから、本当にフィンランドの「かもめ食堂」を中心としたところで起こる些細な日常を描いているんですよね。

でも違うと思えば違うような気もします、なんかとっても変で笑えるんですがホンワカと温かいモノを感じる映画なんですよね〜、

『過去のない男』の主演俳優のマルック・ペルトラも良かったですが、『かもめ食堂』の記念すべき最初のフィンランド人のお客”トンミ・ヒルドネン”のヘタウマな日本語と漢字Tシャツも面白かったです、はいりさんやもたいさんとのかけひきも微妙で絶妙で面白かったです。

特に”トンミ・ヒルドネン”はサチエさんの役名と一緒で夢に出てくるくらい覚えました、片桐はいりさんやもたいまさこさんの役名よりも覚えています、”トンミ・ヒルドネン”恐るべしです。

コピ・ルアックのことやラスト間際でサチエ(小林聡美)がポロッと吐いた言葉、“かめも食堂”で働く事になるミドリ(片桐はいり) とマサコ(もたいまさこ)の働く理由など、随所に見所があって飽きさせませんでした、ラストも凄く良かったと思います。

フィンランドの大自然は殆ど出てきませんが、フィンランドのことがもっと好きになってくるような作品でした!!是非皆さんもご覧になってください、この面白さは保障できます!!

この「かもめ食堂」が、2007年初見の映画第3位でした。


『2007年初見の映画第第2位』

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『2007年初見の映画第第2位』は、キャメロン・ディアス主演でトニ・コレットとシャーリー・マクレーン競演の「イン・ハー・シューズ」です。

この映画は2007年の新作としては6本目に観た映画でしたが、1位の映画が登場するまではずっと『2007年の1位にしよう』と思っていた映画でした、そう思わせてくれるくらいいい映画でした。

キャメロン・ディアスが超演技派の トニ・コレットやシャーリー・マクレーンと競演すると聞いた時は、正直言ってとても心配でした、キャメロン・ディアスも『ギャング・オブ・ニューヨーク 』や『 マルコヴィッチの穴』 に『バニラ・スカイ』と出演して、演技の幅を広げてきたと言っても『 メリーに首ったけ 』や『 チャーリーズ・エンジェル シリーズ』の印象が強いですからね。

キャリアはあるが自分を抑え続けて生きてきた姉ローズ(トニ・コレット)と、ルックスだけで人生を切り抜けてきた妹マギー(キャメロン・ディアス)。そして、娘の死を背負い続ける祖母エマ(シャーリー・マクレーン)という3人の女性が、それぞれにぴったり合う自分だけの靴に出会っていくまでの様子を、繊細で丁寧に綴っていく爽やかな人間ドラマです。

こうやって言葉にしてしまうと短くて簡単ですが、なにか言葉では簡単には言い表せないような作品でしたね、本当にいい映画だったと思いましたが一時期話題になったものの賞レースにも参加していなかったようで、どうしたんだろうと思っていました。

でもそれが一昨年観た『シンデレラ・マン』と同じで、不当に低く評価をされてしまった映画だったんだなぁと感じました、この年のオスカーの作品賞獲得作品よりもずっと素晴らしい作品に僕は思いました。

問題はただ一つ、実際はトニ・コレットの方が2ヶ月ほど年下なのに、完全に”キャメロン・ディアスの姉”役ブリが似合ってしまっていることだけでしょう。

しかしその”姉妹愛”が実に素晴らしいですよね、顔が可愛いくてスタイルがいいことだけが取り柄だと思っている妹マギーをキャメロン・ディアスが、容姿をいつも妹と比べられてきてので頭脳だけでもと弁護士になった姉ローズをトニ・コレットが演じていたんですが、お互いがとてもハマリ役のようにピッタリと役になりきっていましたね、二人とも自分のこれまでの生き方にいつも疑問を抱きながら暮らしています。

そしてマギーはローズの男と寝たためローズに追い出され途方に暮れますが、亡くなったと父に聞かされていた祖母エマ(シャーリー・マクレーン)が生きていると知り、エマを頼りにフロリダへと向かうのですが・・・・・・。

そこからの展開も見事に描かれていて孫娘のマギーの来訪に喜びながらもマギーの胸のうちを読んで、エマはマギーがのちに”元気なシニアたちの施設”と自ら呼ぶようになる老人ホームで働くように契約します、そしていなくなった妹を心配しながらもローズは新しい恋と仕事に生きがいを見出す事になっていきます。

マギーが”元気なシニアたちの施設”で働くようになって一番強く心に残っているのは、”元気なシニアたちの施設”での教授とのシーンですかね、あのマギーの”難読症”を見破ってそれでも読ませる教授とのシーン、あのシーンは凄く素敵でこの映画の中で一番重要で大切なシーンなのかもしれません。

”難読症”って僕等にはあんまり馴染みのない言葉ですよね、難読症とは他の能力には何ら問題はないのに、読書する時や、特定の文字を綴る時などに障害がおこる症状のことだそうです。確かトム・クルーズもそうでしたよね、調べたらキアヌ・リーブスやオーランド・ブルームなんかもそうで、それを克服したことで知られているそうです。

その”難読症”を”元気なシニアの施設”の教授が優しく指導してくれて、その”難読症”を克服して教授に「君は頭のいい女性だ」と褒められて嬉しそうにしているマギー=キャメロン・ディアスの表情が素敵でした、彼が亡くなった後の表情もとても良かったです。

姉のローズ役のトニ・コレットも良かったです、トニ・コレットがピンとこないひとは『シックス・センス』で幽霊が見えるオスメント君のママをしていた人というと分かるかもしれませんね。

ローズが弁護士を休職してからやり始めた仕事を、凄く楽しそうに演じていたのが印象的でした、弁護士をしている時は強張っていた表情が和らいでいました。弁護士をしていた頃よりもイキイキとしてましたね、腰掛のつもりの仕事だったのに、まるで天職に出会った時のようにキラキラ輝いていました。

そして祖母のエマもまた、亡くした娘の事(ローズやマギーの母)や先立たれた夫の事、長い間疎遠になっていた孫娘達との問題を解決して行きながら、自分にピッタリの形と大きさの靴を探し出して行きます。あまりにもキャメロン・ディアスとトニ・コレットの演技が素晴らしかったので、あまり触れませんでしたがこの大女優・シャーリー・マクレーンの演技はお見事でした。

流石の貫禄でしたね、話していなくてもただそこにいるだけで画になる女優さんですね、さすがウォーレン・ベィティのお姉さんですね。

キャメロン・ディアスやトニ・コレットが縛られるように履いていたハイヒールから、自分にあった事を始める時に履きやすいスニーカーに履き替えていたり、さりげなく靴のアップからシーンが始まったりと、細かいところにも気配りがされていてとても良かったです。

そしてローズのラストの妹マギーのハプニング・スピーチの時の表情、マギーが”難読症”だと分かっているので心配でたまらない姉としての表情と新婦としての嬉しさとが入り混じった複雑な表情が印象的でした、そしてマギーが詩を読み終わって”難読症”が治ったのが分かって心から嬉しいといった表情が忘れられません。

キャメロン・ディアスやトニ・コレットが縛られるように履いていたハイヒールから、自分にあった事を始める時に履きやすいスニーカーに履き替えていたり、さりげなく靴のアップからシーンが始まったりと、細かいところにも気配りがされていてとても良かったです。

それぞれが自分にピッタリとくる靴を、色々な経験をしながら自分の力で探し出していく素晴らしいドラマです、説明が長くて自分でも良く分からなくなっているので、この映画がいかに素敵な映画か分かっていただけると思います。

それにしても『イン・ハー・シューズ』ってタイトル、いいタイトルですね、色々解釈できて奥が深いです。

この「イン・ハー・シューズ」が、2007年初見の映画第2位でした。


堂々の『2007年初見の映画第第1位』

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そして『2007年初見の映画第第1位』の発表です、初見の新作約260本の頂点に立つのはなんでしょうか??

堂々の『2007年初見の映画第第1位』は、蒼井優チャンと松雪泰子チャン主演の「フラガール」です。

常磐ハワイアンセンター(現在はスパリゾートハワイアンズ)の誕生秘話を40年の時を超え完全映画化したものです、僕が小さかった頃には『常磐ハワイアンセンター』が既にありましたが、なんであんなところに『ハワイアンセンター』があるんだろうとは思っていました。

しかしその『常磐ハワイアンセンター(くどいようですが現在は、スパリゾートハワイアンズと言うのだそうです)』に、このような背景があったとは知りませんでした、今までは少し笑っちゃったりしましたが今では行きたいと思うようになりました。

この物語はかなり脚色が銜えられているみたいですが、実話に基づいて作られたみたいです、実際に主演の蒼井優チャンや松雪泰子チャンなどは実在の人をモデルにして作られた役柄みたいです、松雪泰子チャン演じるダンスの先生平山まどかのモデルとなったのはカレイナニ早川<早川和子>さんという人だそうです。

このカレイナニ早川さんは常磐音楽舞踊学院最高顧問で、70歳となった現在もダンスの先生をしているそうです。

昭和40年、時代は石炭から石油へと変わり福島県いわき市の炭鉱町は先細りの一途をたどっていました、そこで起死回生のプロジェクトとして豊富な温泉を利用したレジャー施設“常磐ハワイアンセンター”が計画されました。

そして目玉となるフラダンスショーのダンサー募集が地元の少女たちに対して行わ、この町から抜け出すチャンスだと考えた早苗(徳永えり )は紀美子(蒼井優 )を誘って説明会へと向かいます、説明会ではセクシーな衣装で踊る姿に大半の応募者が逃げ出し、残ったのは紀美子と早苗の他には初子(池津祥子 )と小百合(山崎静代 )のわずか4人だけでした。

そんな中、元SKD(松竹歌劇団)のダンサー平山まどか(松雪泰子 )がフラダンスの教師として東京から招かれますが、とある事情で渋々やって来たまどかは教える相手がズブの素人と分かり、完全にやる気を失ってしまいます。

父を炭坑で亡くした紀美子や早苗たちは”フラガール”を目指して頑張ります、家族の反対や早苗のリタイヤなどでフラガールを諦めそうになる紀美子ですが、まどか先生をはじめとする仲間や兄の応援などで再び頑張っていきます・・・・。

2007年のナンバー1に相応しい作品でしょう、近年滅多に邦画を賛えることのなかった映画評論家で僕が勝手に師と仰いでいるおすぎさんが、久々に賞賛した映画としても話題となりました。

蒼井優チャンを主役としている批評があったり松雪泰子チャンの方を主役としている批評があったりしましたが、やっぱりカレイナニ早川さんをモデルにした松雪泰子チャンが主役になるんだろうなーと思いました、でも2人のどちらが主役でも僕は全然構わないです。

松雪泰子チャンがダンサーの役をやっていると聞いて、正直「彼女で大丈夫なのか??」と思いました、スタイルは抜群だろうけどダンスは・・・・・・なんて思っていました。

でもそんな心配は必要ないとスグに思い知らされました、蒼井優チャン達4人がまどか先生(松雪泰子チャン)のダンスを覗くシーンがあるのですが、これがまた躍動感に溢れていて素晴らしかったです。

演技も良かったですね、嫌々始めた"フラガール"の先生まどかでしたが残った4人の熱意や早苗の事件、小百合の父親が亡くなって死に目にあえなかった責任をとる場面も印象的でした、ダンスの先生だけではなくて人間的にも成長していく平山まどかを熱演していました。

蒼井優チャンも素晴らしかったですね、実質的な主役と言ってもいいと思います、蒼井優チャンの映画を観るたびに違った”蒼井優”が観られて楽しいです、本当に役に入り込んでいますよね、今回もとても良かったです。

蒼井優チャン演じる紀美子はお父さんを炭鉱で亡くして、母で炭鉱に勤める富司純子演じる千代(僕等の時代は寺島純子さんでしたね)と、やはり炭鉱に勤める優しいけどオッチョコチョイの兄豊川悦司演じる洋二朗と暮らしています。

親友の早苗に誘われてはじめたフラガールでしたが、母の千代は紀美子をしかってひっぱたいても(殴ってもとはチョット違う感じかな?)炭坑で働くように言い聞かせようとします、そんな紀美子は夢半ばでリタイアせざるを得なかった早苗の事や最初は嫌っていたまどか先生への憧れや尊敬の念から、フラガールになることを誓っていつしか”フラガール”のリーダーとなって皆の先頭に立つようになります。

それにしても蒼井優チャンの演技は凄かったですね、演技力は勿論の事華もあって素晴らしい女優さんだと思います、その都度違った女の子を演じわける彼女の力は凄いと感心させられました、ラストの一人のダンス・シーンは必見の出来栄えです!!


トヨエツも素晴らしかったです、妹の紀美子やまどか先生を暖かい目で応援しながらそれでも自分の生きる道は炭坑夫しかないという、どこか不器用な紀美子(蒼井優チャン )の兄の谷川洋二朗を好演していました。

そして母親役の富司純子も流石、炭坑夫の未亡人でで自分も炭坑で働ながら紀美子と洋二朗を育てて、娘の紀美子のフラガール入りを反対していたがやがて・・・・といった微妙な心の変化を上手く演じていました。

あんまりネタバレしてしまうといけませんが、事故で小百合の父親の死に目にあえなかったフラガールに対して風あたりが一層キツクなった時に、フラガールのために通りかかった洋二朗と一緒に皆に頼み事をしてまわるシーンはお見事でした!!

一番心配していた南海キャンディーズのしずチャンの演技も、思っていたよりもずっと上手で安心しました、個性の強い高橋克実さんに寺島進さんもどうかと心配しましたが、上手に雰囲気を壊さないように上手く個性を発揮していました。

きっと「フラガール」の存在は、炭坑が『常磐ハワイアンセンター』に変わる事のホンの一部に過ぎないのかもしれませんが、そこだけにスポットを当てた分余計な情報や別のドラマが入ってこなかったのも良かったのでしょう。

40年以上も昔の女性達がみな蒼井優チャン達のように素晴らしいスタイルではなかったと思いますが、彼女たちの情熱と想いが見ているこちらにも伝わってくるようでした、ラストのフラガールたちのダンス・シーンは素晴らしかったです、とりわけ蒼井優チャンのフラダンスは凄かったです!!


この上手くまとまってないグダグダ感も、いかにも僕らしくてこの映画の素晴らしさを物語ってくれているかのようでしょう、本当に素晴らしい作品でした。

この『フラガール』が、2007年初見の映画堂々の第1位でした。