 | 『トリコロール三部作』などで知られるポーランドの巨匠、クシシュトフ・キエシロフスキの遺稿を、「ノー・マンズ・ランド」でゴールデングローブ賞とアカデミー賞の外国語映画賞をW受賞し、鮮烈なデビューを飾った新鋭ダニス・タノヴィッチ監督が映画化したものです。キエシロフスキがダンテの『神曲』に想を得て構想した三部作「天国」「地獄」「煉獄」のうちの「地獄」編に当たるそうです。そういえば、「天国」編はトム・ティクヴァ監督により「ヘヴン」として2002年に映画化されました、とても素晴らしい映画でした。 ある出来事によって父親を失った三姉妹とその母親が、それぞれに陥る愛を巡る地獄のさまを緊張感溢れるタッチで繊細に、かつ情熱的に描いています。 主演の長女ソフィには「 8人の女たち 」などのエマニュエル・ベアール 、もう今年で42歳になりますがちっとも老けないですねぇ。そして次女のセリーヌには「デリカテッセン」などのカリン・ヴィアール、三女のアンヌには「 ひとりぼっちの狩人たち 」などのマリー・ジラン。母親役には「他人のそら似」などに出ていて、ジェラール・ドパルデューの妻のキャロル・ブーケ、ジャン・ロシュフォールやジャック・ペランも出ています。
22年前に起きた悲劇によって父親を失った三姉妹。それは彼女たちの心に深い傷として残り、いまでは美しく成長した彼女たちがそれぞれに抱える苦悩の遠因ともなっていた。長女のソフィ(エマニュエル・ベアール)は夫ピエール(ジャック・ガンブラン )の浮気を疑い、激しい嫉妬が彼女を見境もない行動に駆り立てる。次女のセリーヌ(カリン・ヴィアール )は恋人もいない孤独な日々。体の不自由な母(キャロル・ブーケ)の世話を一身に引き受けていた。そして大学生の三女アンヌ(マリー・ジラン)は、不倫の関係にあった大学教授から突然の別れを告げられてしまう。そんな彼女たちは、思いもよらぬ形で再び22年前の出来事と向き合うことになるのだった。
「ノー・マンズ・ランド」程のインパクトは無かったように思いますが、とてもしっかりしたドラマに仕上がっていると思います、それぞれの役者さん達が与えられた役を好演していて、これぞ適材適所といった感じがしました。 ただ僕がエマニュエル・ベアールを大好きなせいか、彼女が夫に浮気をされる妻役なんて合わないような気がしてしまいます、相手を惑わす役柄ならばピッタリとくるのですが、「恍惚」なんて適役だったと思います。 あんまりにもエマニュエル・ベアールが美しすぎるので、浮気される人妻とか演じて見ても「嘘だろ」とか思ってしまうんですよね。 を演じたカリン・ヴィアールも良かったですね、母親の世話のために自分の時間もナカナカ作れずにいる、孤独な女性を上手に演じてました。 何事にも臆病になっていて、全ての事に自信が持てない次女のセリーヌを好演しています、綺麗なんだけど何処か孤独感が出ていて、勇気を持って名に過去一歩踏み出しても裏目ってしまうという。 そして三女アンヌのマリー・ジランは、幼い頃に父の愛を受けられなかったことが影響したのか、親友の父親と不倫関係になってしまい・・・・・。 そしてセリーヌはある人から、幼い頃の父の犯した事の真実を知る事になるのだが・・・・といったお話ですが、ラストの母親のキャロル・ブーケの一言が凄いですね。 皆が久しぶりに母親の病院に集まって、セリーヌが父親の死に関する新たな真実を離すのですが、母親のたった一言の言葉が(彼女は話すことができないので紙に書いたのですが)強烈でしたね。 キエシロフスキの遺稿の三部作のうち、この「美しき運命の傷痕」は「地獄」編に当たるそうですが、「地獄」の中でも奥深いところにある”愛”というものが大きく横たわっているかのようでした、そう感じさせてくれる言葉の重みがキャロル・ブーケの母親にはありました。 皆さんも是非ご覧になってみてください、強烈なインパクトを与えてくれる映画でした、お勧めします。 |