 | クローネンバーグ監督が、アカデミー賞にノミネートされるような作品を作り上げたと言うので、この映画は凄く楽しみにしていました。 ある事件をきっかけに夫の過去を巡る黒い疑惑が浮上して、平穏だった一家が暴力と罪の渦に呑み込まれていくさまを描いているのですが、こちらが期待していた以上の出来栄えになっていると思います。 「ヒストリー・オブ・バイオレンス」の名に違わずに、リアルでショッキングな暴力描写とともに綴った、衝撃のサスペンス・ドラマになっていました。 そして暴力と対立する愛も、この作品の重要なテーマです、「避けられない暴力」の罪を、人はどう受け入れてそれを許すのか。主人公の家族の姿が、それを繊細に浮き上がらせているようでした。 主演は「 ロード・オブ・ザ・リング シリーズ」で一躍人気者になってしまったのヴィゴ・モーテンセン、昔は悪者キャラばかりでしたが「 ロード・オブ・ザ・リング シリーズ」の大ヒットで、すっかり二枚目の役が増えてきましたね。妻エディを演じたマリア・ベロも、夫への愛と隠された過去との間で苦しむ妻エディを熱演していました。他にも「アポロ13」や「 めぐりあう時間たち」のエド・ハリス、名作「蜘蛛女のキス」のウィリアム・ハートなど、クローネンバーグにしては豪華すぎるキャストだとだと思います。
インディアナ州の田舎町で小さなダイナーを経営するトム・ストール(ヴィゴ・モーテンセン)は、弁護士の妻エディ(マリア・ベロ)と2人の子どもとともに穏やかな日々を送っていた。そんなある夜、彼の店が拳銃を持った2人組の強盗に襲われる。しかしトムは驚くべき身のこなしで2人を一瞬にして倒してしまう。店の客や従業員の危機を救ったトムは一夜にしてヒーローとなる。それから数日後、片目をえぐられた曰くありげな男フォガティ(エド・ハリス)がダイナーに現われ、トムに親しげに話しかける。人違いだと否定するトムだったが、トムの過去を知るというその男は、以来執拗に家族につきまとい始める・・・・。
この「ヒストリー・オブ・バイオレンス」、とても良く出来ていたと思っています、クローネンバーグの最高傑作になるかもしれませんね。 「 デッドゾーン 」や「ラビッド」のように分かりやすい傑作も沢山あれば、「裸のランチ 」や「イグジステンズ 」のように難解で、どのように評価したらいいのか分からない作品もいくつかあります。 そんなクローネンバーグの作品がオスカー・レースを賑わすような作品なんてどんなものなのだろうかと、とても気になっていました。 まずバイオレンス・シーンの描写の仕方に驚かされました、結構リアルでスプラッターじゃないけど直球で来たなという感じがしましたね、下手なスプラッター・ホラーなんかよりも凄かったです。 オスカー俳優のウィリアム・ハートやノミネートの常連エド・ハリスが、この「ヒストリー・オブ・バイオレンス」で数々の賞に輝いたのは分かりますが、一つの事件をきっかけに過去が序々に明らかになって行く男を丁寧に演じていた、ヴィゴ・モーテンセンの演技は彼最高の演技だったと思います。 せめてノミネートくらいしてあげろよと思ったのですが、まさに「タイタニック」のディカちゃん状態で、少し可哀相な気がしました。頑張ったんだからもう少し評価してあげてもいいと思います。 マリア・ベロも「 ペイバック 」や「コヨーテ・アグリー」の頃から好きですが、まさか彼女のあんなコスプレがこのような映画で見られるなんて思いませんでした、ヌード姿も披露して頑張ってましたね、ホントに”旦那がいったい何者なのか”と心配しながらも、なんとかしていこうという妻役を熱演していました。 エド・ハリスはこういう”何者か良く分からない”謎の男が良く似合いますね、登場シーンがもう少しあったらとも思いましたが、あれだけでも十分存在感をアピールしていましたね。 ホラー映画に分類されたりもしますが、家族の崩壊とそれを再生しようとする家族の皆のドラマです、ラスト・シーンがとりわけ緊張感を放っていて素晴らしいです、お勧めします。 クローネンバーグらしい"エロス"も重要な役割を果たしていました、「ヒストリー・オブ・バイオレンス」はナカナカいいバイオレンス・ラブ・サスペンスでした。 |