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「大いなる陰謀」をお勧めします。

これが”アメリカ”の今の、対テロ戦争に対する思いなのでしょう。

画像:ooinaruinbou.jpg説明
みずからの政治的野望のため、対テロ戦争への新戦略を打ち出した共和党の上院議員。そんな彼の特ダネ情報に耳を傾けつつ、自分が情報操作に利用されているだけかも、と疑いを抱く女性記者。そして自分の教え子たちが戦場に駆り出されたり、あるいは逆にすっかり政治不信に陥って現実に背を向けたりする姿を目の当たりにし、憂慮の色を深める大学教授。そんな3人がそれぞれの立場から意見を述べ合う様子を並行的に描きつつ、レッドフォード監督が現在のアメリカ社会が抱える深い悩みを鋭く浮き彫りにした、充実の力作でした。


ニュース番組の人気女性記者ロス(メリル・ストリープ)は、将来の大統領候補と目される共和党の上院議員、アーヴィング(トム・クルーズ)から特別にお声がかかり、彼との独占インタビューの場に赴く。そこで彼が意気揚々と語って聞かせたのは、対テロ戦争のための新戦略の構想だった。一方、自分の2人の教え子が志願兵として戦地に出征するのを複雑な気持ちで見送った大学教授のマレー(ロバート・レッドフォード)は、近頃すっかり学習態度に衰えが見える生徒のトッドを呼び出し、彼と意見を交わす。



トム・クルーズにメリル・ストリープにそして7年ぶりにメガホンを執ったロバート・レッドフォード、三人のオールスター競演が実現した社会派ドラマでした、対テロ戦争の戦略を打ち出し大統領への野望を目論む政治家とその真相に迫る女性記者の熾烈な駆け引きを中心に、無情にもその戦略に巻き込まれた人々それぞれの顛末を重厚なタッチで描いていました。

対テロ戦争の持論を展開している上院議員トム・クルーズ演じるアーヴィング、大統領への野望を抱く彼は女性ジャーナリストのメリル・ストリープ演じるジャニーンへ言葉巧みに情報操作、アーヴィングの裏には“仕組まれた真実”が潜んでいると確信したジャニーン。
一方対テロ戦争に命をかけることを選択した2人の若者マイケル・ペーニャ演じるアーネストとデレク・ルーク演じるアリアンは、その戦略に従って戦地であるアフガニスタンに赴き彼らの恩師である大学教授ロバート・レッドフォード演じるマレーは、教え子たちの選択に誇りと戸惑いを隠せないでいた・・・。

最近増えてきた“9.11後のアメリカの対テロ政策”を振り返るドラマでした、トム・クルーズが狡猾で口の達者な上院議員のアーヴィングを熱演していてメリル・ストリープがジャーナリストのジャニーンを、ロバート・レッドフォードがベトナムに従軍した経験を持つ優秀な大学教授を演じていました。

メリル・ストリープ演じるジャニーンがアーヴィングの部屋でジャニーンがアーヴィングを讃えた記事などと並んで、“正義と平和なら正義を選ぶ”という、ルーズベルトの残した言葉が大多数のアメリカ人の気持ちなんでしょうね、イラクやアフガニスタンでの対テロ政策という名に彩られた無駄な戦争をアメリカの人々は今はこういう思いで見ているのでしょう、野心家のアーヴィングをトム・クルーズが好演していましたしレッドフォードもメリルも素晴らしかった。

ロバート・レッドフォード演じる大学教授のマレーが優秀な学生の一人トッドと議論するシーンがありますが、麻薬常習者に清潔な注射器を支給するという案は『飲酒運転のレーンを道路につくるようなもの』という言葉も印象的、頭はいいトッドですが最近はこういう無関心な若者たちが増えているのでしょう、レッドフォードの2人の優れた若者たちを戦地に行かせてしまったことを悔いている気持ちが伝わってくるようでした。

アーヴィングみたいな政治家や軍人たちもいけないのでしょうが、それを追随したマスコミもきっと悪かったのでしょう、メリル・ストリープの最後の表情が全てを物語っていました、お勧めします。