 | 「マルホランド・ドライブ」やTV「ツイン・ピークス」など、常にファンをあっと驚かせてきたリンチ監督が、まさに“リンチ帝国(エンパイア)”と呼ぶべき独自の高みに到達してしまいました。 同監督の「ワイルド・アット・ハート」などでもお馴染みのローラ・ダーン演じる映画女優と、女優が出演する映画の二重構造など、見る者に“ついて来られる者だけついてこい”といわんばかりの混沌が展開しながら、そこかしこにリンチならではの美的センスが見え隠れしますが・・・・。時に監督自身がビデオカメラで撮影したという場面もあり、リンチの複雑な頭の中を覗くようで好奇心を刺激されます、しかし今回は特に難解だったかな??
ポーランド映画「47」をリメイクする作品「暗い明日の空の上で」に再起を賭けるハリウッド女優ニッキー(ローラ・ダーン)。だが「47」は撮影中、主演の俳優2人が何者かに殺されて未完に終わったという、いわくつきの企画であった。やがてニッキーは共演者のビリー(ジャスティン・セロー)と不倫の仲になるが、その頃からニッキーは現実と自分が今出ている映画の中の世界、両者の間の境界線が曖昧になっていき、さらにそれらと異なる世界でも奇妙な出来事が繰り広げられる。
新作映画の主役に抜擢されて再起を狙う女優でしたが、その映画は主演俳優2人が何者かに殺されて未完に終わったいわくつきの企画だった・・・。 奇才デヴィッド・リンチ監督が不条理な物語と、摩訶不思議な映像世界を極めた異色ミステリー作品でした。 デヴィッド・リンチ監督お気に入りのローラ・ダーン主演で共演にもお気に入りのローラ・ハリング、グレイス・サブリスキーやウィリアム・H・メイシーにジェレミー・アイアンズ、ナスターシャ・キンスキーに日本からは裕木奈江らが出演するなど多彩な俳優陣にも注目でした。ナオミ・ワッツも声の出演していましたね。 街の実力者である夫と豪邸に暮らすローラ・ダーン演じる女優ニッキー、彼女は新作映画の主演に抜擢され再起を狙いますが不倫を描いたその作品、「暗い明日の空の上で」は曰く付きのポーランド映画「4ー7」のリメイクだと、ハリー・ディーン・スタントン演じる助監のフレディーやジェレミー・アイアンズ演じる監督のキングズリーから知らされます。 そして映画のストーリーとリンクするようにニッキーは共演者のジャスティン・セロー演じるデヴォンと不倫に溺れていき、映画の中ではニッキー演じるスーザンが愛憎に巻き込まれ、そこへ「4ー7」の舞台ポーランド50年代風の部屋に佇む3人のウサギ人間たち、部屋で独りテレビモニターに見入るロスト・ガールといった不可解な世界が、複雑に絡み合っていき・・・。 もうオープニングからリンチお得意の世界が繰り広げられていました、いきなりウサギ人間の舞台劇を見て泣くロスト・ガールは出てくるし、グレイス・サブリスキーはワケのわからない迫力ある表情や凄みでローラ・ダーンに『殺人が起こる』と迫るし。 本当にワケがわからない映画でした、リンチの映画は『ワイルド・アット・ハート』や『ストレイト・ストーリー』、『エレファント・マン』のように比較的分かりやすくて素晴らしい映画もあれば、『ブルー・ベルベット』や『イレイザーヘッド』に『マルホランド・ドライブ』のように、今ひとつワケが分からなくて難解で不条理な世界で覆われていたり。 分かろうとしたらリンチにやられてしまうので、流されるまま流されてしまおうとしましたが『このシーンはこの伏線かな?』と考えても、簡単にこちらを裏切るように物語は流れていきました、登場したカワイ娘チャン達が全員でケツをフリフリしながら『ロコモーション』歌ったり・・・。ニッキーの境界線が曖昧になって行くところまでは分かりますが、裕木奈江やローラ・ハリングが出演してくる頃には完全に混沌としていました。 リンチは『ワイルド・アット・ハート』のようにローラ・ダーンを美しく撮るのはいいんだけど、3時間もかけてこんな分からない映画を撮るんだったら、面白いホラー映画の一つでも撮ってもらいたいです。 分からなかったですがそれがリンチの魅力かもしれません、あなたにはこの意味が分かりますか、お勧めします。
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