 | 世界のキタノが長編第13作に選んだ題材は、得意なギャングバイオレンス映画を“封印”して他のジャンルに挑む映画監督という、自虐色の強いセルフ・パロディとなりました。 北野監督の苦悩を露骨に出し過ぎて物語が破綻しているという声もあれば、現在の興行重視の日本映画界への大胆な批判という声もあり、これほど賛否両論真っ二つに分かれる映画は珍しいですね。 とはいえ、いずれにせよ世界の巨匠となった北野監督が、映画や映画監督という職業をどう捉えているかが興味深いトコロ。北野組というべき面々を中心にした豪華キャストも、監督の人徳がなせるワザですね。
ギャング映画を得意とする映画監督キタノ・タケシ。彼はある時、“ギャング映画は二度と撮らない”と宣言してしまい、これまで撮らなかったタイプの映画に挑戦することに。そして、小津安二郎風人情劇、昭和30年代もの、ホラー、ラブ・ストーリー、時代劇、SFなど、片っ端から色々なジャンルに挑むが、いずれも中断に追い込まれる始末。そこで監督は、困り果てた末、ふとした閃きで一本の映画に取り掛かる。それは、金のためなら何でもやるサギ師の母とその娘が、政財界の大物・東大泉の御子息らしき男に財産目当てで接近するというもの。しかし、その時、地球には危機が迫っていた…。
“世界のキタノ”が自分の創作活動を洒落のめすセルフ・パロディです、得意のギャング・バイオレンスを封印してしまった映画監督が、新たなフィールドでヒット作を生み出そうと奮闘します。 人情劇・ホラーなど雑多なジャンルを茶化して見せ、本編自体とんでもない展開になるドタバタさが魅力でもあり弱点でもあり・・・。 北野武監督は急に彼が得意とする残虐描写がいっぱいの、ギャング映画を封印して小津安二郎監督風の映画やラブ・ストーリー、懐古趣味的映画にホラー映画など色々なジャンルの映画に挑戦しますがどれも上手くいきません。 とうとうそうしているうちに、事態は摩訶不思議な方向へと進んでいき・・・。 僕は『コールタールの力道山』をキチンと見てみたかったです、松坂慶子さんや内田有紀チャンに鈴木杏に蝶野・天山に江守徹、吉行和子さんに北野映画には欠かせない寺島進んに大杉漣さんに岸本加世子さんなど、ナレーションの伊武雅刀さんも加えた豪華キャストでしたがなんか残念な結果だったかな? 江守徹のタイツ姿や宝田明さんのタイムリー過ぎる交通事故、そして川下りの急流の岩の上に何故かいるゾマホン・・・。お笑い出身のたけしだからお笑いに走りたくなるのかもしれないけど、あまり笑えない所が多かったし『たけし君人形』もイマイチでしたかね。 なんだろうな、『監督・ばんざい!』は映画を作る情熱を感じられないというか、松本人志の『大日本人』よりはマシだけどどうしようもない作品だと思えました、少し時間を置いてジックリ挑戦したらいいのかなと思います。 おすぎさんは“監督が悲鳴をあげているように感じられた”と言ってました、僕は北野映画が好きだからそこまでは思いませんが、『TAKESHIS’』みたいに期待を裏切られた感じがしました。 黒澤監督の「夢」という映画に触発されたのかもしれませんが、キチンと一本しっかりした映画をつくって欲しかったです、『現在の興行重視の日本映画界への大胆な批判』というのは買い被り過ぎのように思いました、ちょっと残念でしたね。 |