 | 世界的に広がる禁煙ムーブメントを背景にした、シニカルな社会派コメディ映画です。 弁舌巧みで冷静沈着なタバコ業界ロビイストの男を主人公に、タバコを絶対悪と決め付けて判断の自由すら奪うような社会の風潮に皮肉を利かしています。全米公開時はわずか300館の上映ながら興行収入トップ10に入り、1館あたりの興行収入では年間1位に輝くほどヒットした作品になりました。 アイヴァン・ライトマン監督を父に持つ、ジェイソン・ライトマンが上々の監督デビューを飾っていました。「エリン・ブロコビッチ」「幸せのレシピ」などのアーロン・エッカートが、スポークスマンの主人公をユーモアたっぷりに熱演していました、共演にはマリア・ベロやケイティ・ホームズ、ウィリアム・H・メイシーなちど。
タバコ研究アカデミーのPRマンをするニック・ネイラー(アーロン・エッカート)は、厳しさを増すタバコへの攻撃をかわすため連日マスコミの矢面に立って戦い続ける業界の顔。中でも、パッケージにドクロマークを、と息巻くフィニスター上院議員(ウィリアム・H・メイシー)は目下最大の懸案事項。そんなある日、ニックは映画を使ってタバコのイメージアップを図る“スモーキング・ハリウッド作戦”の指揮を任される。一人息子のジョーイ(キャメロン・ブライト)を連れ、ロサンジェルスへと渡ったニックは、さっそくハリウッドの大物エージェントと面会、タバコPRのための映画の企画を話し合う…。
クリストファー・バックリーの小説『ニコチン・ウォーズ』を元に、アメリカの拝金主義と情報操作の実状に迫る風刺コメディです、『エリン・ブロコビッチ』のアーロン・エッカートが『カンバセーションズ』に続いて主役のニックを熱演してました。 禁煙の気運に逆らってタバコ業界を盛り立てようと、自慢の話術で奮闘するタバコ研究アカデミーのスポークスマンの姿を、シニカルに面白おかしく綴っていました。 禁煙番組の討論会で“保険福祉省”や“喫煙反対の会の母”、“肺を守る会”に“ガン患者の少年”を前にして、ニック・ネイラーは『保険福祉省は少年が死ねば予算が増えるから、少年の死を望んでいる。』と保険福祉省の役人を打ち負かし、『タバコ業界は大切な顧客がなくなってしまうから、少年に生きていて喫煙して欲しい。』と言います、本当にニック・ネイラーはああ言えばジョウユじゃないですが口が上手いです。 息子の『記憶の棘』でニコール・キッドマンの相手役をやったキャメロン・ブライト演じるジョーイにも呆れられますが、学校の“仕事はなんですか”で生徒たちの質問に天才的な話術で受け答えします、『誰が言ったのかと訊ねてみよう、大切なことは自分で決めよう』と。 その息子のジョーイもニックのカリフォルニア出張に付いていくために、別れたニックの妻で母親のジルに『この旅行はパパを知るチャンス、でも愛の消えた男への屈折した思いで行くなと言うなら諦めるよ』と“議論”して言い負かします、まさにこの親にしてこの子ありですね。 ある店で毎週集まるアルコール業界のマリア・ベロ演じるポリーと銃器業界のボビー、タバコ業界のスポークスマンのニックたち“MOD(モッズ)特捜隊”の討論会も面白かったです、『フィルター』を最初に導入したロバート・デュヴァル演じるタバコ業界のドンでキャプテンも存在感があって流石。 トム・クルーズ夫人のケイティ・ホームズ演じる女性記者ヘザー・ホロウェイもしたたかですし、宿敵のウィリアム・H・メイシー演じるフィニスター上院議員ともやりあいも見事、ラストの“ドクロ・マーク”をタバコにつけるかという公聴会での、ニック対フィニスターの対決も凄く見応えありました。 思っていたよりもずっと面白かった風刺コメディでした、日本の芸能界も簡単にドラマや映画でタバコを吸わないといういい教訓にもなったと思います、とにかく話術が達者で誘拐されても死なないニックに注目です、本当にこの『サンキュー・スモーキング』は面白かったです、お勧めします。 |