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「麦の穂をゆらす風」をお勧めします。

キリアン・マーフィ、見事でした。

画像:muginoho02.jpg説明
1920年代、イギリスの暴政に耐えかね、自治独立を求めて立ち上がったアイルランドの若者たち。はじめは共に手を携えて闘っていた彼ら同志たちが、やがて運命の皮肉な巡り合わせから敵と味方に分かれて対決するようになるさまを、ケン・ローチ監督が痛切なタッチで描き出しました、観る者の胸を深く締めつけるような映画でした。
「28日後...」「プルートで朝食を」のキリアン・マーフィが、ここでも見事な演技を披露しています。映画の題名はアイルランドの伝統的な革命歌の名曲から採られたもので、この戦いで命を落とした若者達への鎮魂歌のようにも思えました。



 1920年。長きにわたりイギリスの支配を受けてきたアイルランドでは、疲弊した人々の間に独立の気運が高まっていた。そんな中、南部の町コークでは、医師を志していた青年デミアン(キリアン・マーフィ)が、ついにその道を捨て、兄テディ(ポードリック・ディレーニー)と共に武器を取り、アイルランド独立を目指す戦いに身を投じる決心をする。そして、イギリス軍との激しい戦いの末に、イギリスとアイルランド両国の間で講和条約が締結された。しかし、完全な独立からは程遠い内容に、条約への評価を巡ってアイルランド人同士の間に賛成派と反対派の対立が生まれ、ついには内戦へと発展してしまう。そして、デミアンも兄テディと敵味方に分かれて戦うことになるのだった…。


アイルランドがイギリスから独立するために、尽力した若者達の姿を描いた辛口のドラマです。ケン・ローチ監督はこの映画で、第59回カンヌ国際映画祭のパルム・ドールの栄誉を手にしました、審査員をやっていたり悔しい思いもしたから嬉しかったでしょうね。
さすがは"社会派"と呼ばれるケン・ローチ監督ですが、やはり冷めた視点で物語を描いていてもどこか暖かさを感じます。
これを見て思ったのは、ナチスもロシアもイギリスも中国も、そして日本もどこでも聖戦の名の下に虐殺行為は行われていたんだなぁということでした。
『プルートで朝食を』のキリアン・マーフィーが、ここでも見事な演技を見せてくれています。
ロンドン一番の病院に就職が決まったデミアンでしたが、出発まえに若い仲間がイギリス軍に意味もなく殺されます、他の仲間にロンドン行きを止められますが、デミアンはロンドンに旅立ちます。しかしアイルランドの駅でイギリス軍の蛮行を目の当たりにして、彼はアイルランド義勇軍に入隊する事を決意します。
デミアンは『5年も解剖学を学んだ、なのに今はアイツを殺す。クリスは幼なじみだ、それだけの価値のある戦いかな』と嘆きます、領主と裏切った幼なじみのクリスも泣く泣く殺します。
恋人シネードに『昔良く僕に料理を作ってくれた、話しをすると何も言わず黙って靴を履くと「息子の所に案内して」と言ってクリスのお墓まで6時間歩いた、お墓の前で「二度と顔を見せないで」』と言われたと話します。僕はこんな経験はないけれどこんな世の中でこういった情勢であれば、きっとこの老婦人のような振る舞いは珍しい事ではないのかもしれません、見ているこちらまで悲しくなるようなエピソードでした。
イギリスから出された和解案にダンは最初の民主化宣言を読み上げて、『もしこの条約を推進したら変わるのは権力者の言葉の訛と国旗の色だけだ』と言います。
ダンとデミアンはあくまでもアイルランドの完全な独立を目指し、テディ達と仲間同士で殺し合うことになります。
昨日まで仲間としてイギリスと闘っていた友が、今日は同じアイルランドとして闘わなければならないこの辛さ、ラストも痛烈に観ている僕達にこのことを語りかけてくるような映画でした。
お勧めします、アイルランドの独立に命をかけた若者達の闘いの物語です、あなたも是非ご覧になってみてください。