 | この「トゥルーへの手紙」の監督のブルース・ウェバーは、80年代のファッション写真界に革命を起こしたフォトグラファーであり、1988年の映画『レッツ・ゲット・ロスト』では、天才ジャズ・トランペット奏者のチェット・ベイカーの実像を監督したそうです。 第一線のアーティストである彼はまた、熱心な愛犬家としても知られているとか。この作品は、パソコンでもメールでもなく、紙とペンを使って愛犬トゥルーへ手紙を書く形で、9.11テロ以降の混迷する世界への不安と希望を綴ったドキュメンタリー・エッセイです。 第二次世界大戦からイラク戦争、キング牧師の演説や、『名犬ラッシー』などの映像をコラージュしたなかに、友人や愛犬たちとの楽しい思い出が詩情豊かに語られています。懐かしいジャズの名曲が使われていたりして、平和へのメッセージを優しく紡いでいってくれるような作品でした。 犬が好きな人にはお勧めですが、そうでない人にも楽しめる作品だと思います。
9・11のテロ事件が起きたとき、ブルース・ウェバーは旅先で、グラウンド・ゼロの近くにあった自宅にいる愛犬たちの安否を気遣っていた。当たり前となっていた幸福な日々は、一瞬にして失われる。その実感を、ウェバーは4匹の飼い犬の末っ子であるトゥルーに、手紙で語りかける。人々は、世界を巻き込んだ過去の大きな戦争や、恐ろしい現実の中で、愛するものを支えに生きてきた。そして平和を願う日々は、これからも続いていく。
色々なお話が飛び交います、ベトナム戦争やハイチ難民のこと、ダーク・ボガードやリズ・テイラーとの暖かい逸話や、ゴスペルのような力強いリズムで魂を揺さぶるマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの演説も挿入されています。 この感動的なキング牧師の演説の映画への使用許可が最後まで下りず、この映画に感銘を受けたモハメド・アリや彼の妻、なんとクリントン前大統領までが教団への説得に当たったという、感動的な製作エピソードが残っているそうです。 リズ・テイラーとの逸話が秀逸でした、以前彼女のドキュメンタリーのようなものでも、リズは言われているよりもずっと賢くて、実に愛すべき人だと言われていましたが、ウェバーの言うとおり素晴らしい女性活動家であり、素晴らしい女優さんだなぁと感じました。 ジョンとヨーコの言葉が引用されています、「War is over ........if you want it」と。「戦争は終わる...あなたが望むなら」と、確かに人間よりも犬の方が平和な生き物かもしれませんね。 エンド・ロールが終ったラストの言葉も、実にこころに残る言葉でした。 『どこかの○○○へ、ごきげんよう!』。この言葉だけで、20点くらい稼いでいます。 「犬みたいに、平和な世界を生きたいなぁ」と、しみじみと感じさせてくれました。 美しい映像と音楽も素晴らしかったです、お勧めします。
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